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介護ニーズ最前線

介護ニーズ最前線

2025.01.07
団塊世代から次世代介護施設

2025年、真正団塊世代(1947-1949年生まれ*)が全て後期高齢者となりました。かねてより2025年問題と言われ、大量の団塊世代が後期高齢者になると大量の要介護者が生まれ、財政が破綻しかねない、という問題です。その2025年を迎えましたが、現実はどうでしょうか。(*)広義の団塊世代は1947-1951年生まれ
実は、多くの介護施設で、入居率、利用率が下がるという現象がここ数年起こっています。要介護者があふれて大変なことになる、という問題だったはずにもかかわらず、正反対の問題が起こっているようです。どういうことでしょうか。
それは、団塊世代の世代特性によるところが大きい、といえます。従来の高齢者像でとらえていても難しいといえます。
これに対し、まず目の前で解決する方策と、そもそも団塊の世代をどうとらえ、どう対処したらいいかということがあり、後者についてまずご紹介したいと思います。

団塊世代は時代と世代の変わり目

団塊世代は時代の変わり目をつくりました。「数の力」で初めての本格的な若者文化を生み、それは人種が変わるほどでした。団塊以前は「見合い結婚」で団塊以降は「恋愛結婚」です。「友達夫婦・友達家族」が始まり、それ以降はそのバリエーションといえます。(図表参照)そして「新しいもの好き」です。つねに時代の先端のものは自分たちが担ってきたという自負があります。団塊以降の若者もそうだといえるでしょう。
高齢者においても同様で、これまでの利用者は「おじいちゃん、おばあちゃん」でしたが、団塊からは多少具合のわるい「おじさん、おばさん」です。この従来とのギャップに対応できればあとの世代はそのバリエーション、つまりこれからの介護施設利用者のモデルづくりになります。

団塊世代とともに創る次世代介護施設

いまロボットやAIをはじめ介護施設自体が次世代へ向けて動き始めています。それは団塊の施設利用と重なります。次のような永続的な次世代施設をともに創ることになります。

●ギターのある介護施設
「うた」が変わります。“どんぐりころころ”も現在の“文部省唱歌”も姿を消します。フォーク・ニューミュージック・ポップス・歌謡曲になります。施設にはギターがあって誰かがいつも弾き語りです。

●利用者が運営するレクリエーション活動
ギターやウクレレ、麻雀、ゴルフパッティング、邦画洋画・音楽ライブ映像鑑賞など何か集まってやることが好きです。自発的なレクリエーション活動です。

●介護予防エクササイズの盛んな介護施設
もともとエクササイズ大好きで、低要介護度であればリハビリを兼ねて積極的にやりそうです。インストラクターがいれば精を出すでしょう

●グルメな介護施設
食にうるさい団塊です。おいしさが介護施設の評価にもつながります。コスト面もあるので一品グルメや、ウンチク好きなので産地など情報付きメニューも考えられます。

●ニューテクな介護施設
新しいもの好きです。タブレット端末使用やマッスルスーツなどには好意的で、移乗介助ロボットや離床介助ロボットなどは面白がりそうです。見守り機能に身体変化把握も兼ねたAIによるコミュニケーションロボットは話し相手としても有効です。

●同世代が支える介護施設
同世代の職員およびボランティアは、わかり合える、話を聞いてくれる、ということで、精神安定の面からも効果的だといえます。

●クロスジェネレーションの介護施設
若い職員に対しても、恋愛婚世代であり、ポップス・ロック世代でもあるため、年齢差のある友人関係になる可能性があります。若者をサポートしたい気持ちもあります。

●コミュニティカフェとしての介護施設
すでに一部で始まっていますが、今後、地域で家族の介護問題に悩む住民も来訪し、かつギターで歌う若者も来れるような地域のコミュニティ拠点になる可能性もあります。

団塊世代の三大問題

しかしながら、片方で団塊世代特有の問題もあります。この問題が解決されれば、いま述べたような次世代介護施設への道が開かれるといえます。想定される問題は大きく三つ、それは「クレーム」および「パワハラ」そして「セクハラ」です。「クレーム」としては問題の指摘が得意な人たちがいます。また、「パワハラ」はこれまで会社や仕事社会でよくありがちでした。さらに「セクハラ」で社内恋愛や不倫を生み出したのも団塊男性です。
ではどう対応すべきか。基本的には「説明」とくに「事前の説明」が重要です。さらに一部のウルサ型には管理職や施設長が直接対応。それは「施設長に言われちゃしょうがない」と予想以上に効果的です。
もう一つの対応法は「持ち上げてあげる」です。「みんなが〇〇さんのようだといいのですが」と言えば、よしわかった協力しよう、となり易いわけです。

団塊世代から新たな介護ニーズ

団塊世代はこれまでも変わり目をつくって来ました。団塊世代から従来の高齢者とは違うタイプの利用者になり、今後はそのバリエーションになって行きます。すでにプレ団塊世代が利用者になり始めています。
これからどういう介護施設にして行きたいか、それを団塊利用者とともにどう創っていくか。それを考えるところに明日の介護施設のあり方が見えてくるといえます。

(図表)年代別各世代と世代の変わり目

(人生100年時代 未来ビジョン研究所資料)

(人生100年時代 未来ビジョン研究所資料)

老施協連載記事を見る

上記に掲載した記事は、第12回「次世代介護施設が花開く」に加筆修正したものです。
老施協は、全国老人施設協議会の略称で、全国の特別養護老人ホームやデイサービスなどの介護施設が参加する協議会です。月刊「老施協」というマガジンを毎月発行しています。この月刊「老施協」の依頼で、これから介護施設に団塊世代が入るようになるとどうなるのか、ということで全12回の記事を連載しました。介護施設および介護に携わる方々のお役に立てれば幸いです。

  • 第1回「団塊世代の”うた”が介護施設を大きく変える」

  • 第2回 「介護施設に“団塊クレーマー”が来る? 」

  • 第3回「高齢女性利用者がミニスカに!? 」

  • 第4回「利用者が利用者を励ます介護施設」

  • 第5回 「封建性と革新性が共存する段階世代」

  • 第6回「エンタテイメント&ゲームが心をつかむ」

  • 第7回「大きな塊にみえて実は“バラバラ世代”」

  • 第8回「グルメとフィットネスで新しい風」

  • 第9回 「デジタルが苦手でも施設のニューテクを担う」

  • 第10回「恋バナの咲く介護施設!?」

  • 第11回「仲間が楽しい介護施設」

  • 第12回「次世代介護施設が花開く」