じいさんばあさんから大パパ大ママへ
新3世代消費/核家族から3世代ネットワーク家族へ
家族からおばあちゃんが消えつつある
いま、家族のなかからおばちゃんが消えつつあります。そんなことはない、高齢社会でますます増えつつあるのではないか、自分の家族はおばあさんどころか、ひいばあさんもいる、という方も多くおられると思います。実は、ここでいう「消えつつあるおばあさん」はその存在ではなく、呼称なのです。いま多くの家族のなかで、「おばあさんと呼ばせない祖母」が増えつつあり、それが一般的だと言っても過言ではない程になっています。
その理由の一つは曾祖母がまだ存命で、介護付き有料老人ホームにいたり、在宅介護をしていたり、あるいは健在で同居ないし近居していたり、します。そうすると祖母としては、「おばあさんはあの人よ。私はおばあさんではないのよ。」となります。実際、孫が呼ぶときに、“どっちのおばあちゃん?”となりかねない面はあります。
もう一つの理由は、当研究所の調査でも60代女性で「何歳になっても若々しい見た目の大人でありたい」と答えた割合は82.4%にも上ります。「私がおばあさん?冗談じゃないわよ」というぐらいの気持ちがある、ということです。
この二つの理由が相まっているのです。ではなんと呼ばれている、あるいは呼ばせているかといえば、大きく二派あって、ひとつは「大ママ」もうひとは「○○子さん・〇〇ちゃん」と名前で呼ばせるパターンです。
これに対し、祖父のほうは油断をしているので概ね「ジイジ」と呼ばれていることが多いといえます。曾祖父のほうが曾祖母に比べて早めに他界していることも大きな要因のひとつといえるでしょう。そうすると、家族のなかでは高齢者は男しかいない、というやや漫画チックなことが起こっているといえます。その男性も孫にそう呼ばれるのは構わないが、それ以外の同年代やましてや若い年代からそう言われるのは我慢がならないという人も少なからずいます。その意味では祖父も「大パパ」といえます。「祖父母」から「大パパ 大ママ」へ大きな転換が起こっています。
この先ますます人生100年時代がすすんで行くとすると、「ひいじいさん」「ひいばあさん」も増えてくると思います。この流れからすると、その呼び方も例えば「チョー(超)パパ」「チョー(超)ママ」となるかもれません。
「新3世代」へ
かつては、子供家族に面倒をみられる祖父母というのは当たり前でした。現在でも、社会的な常識としてそうかもしれません。ところがいまそれが大きく様変わりしつつあります。さきほども述べたように、現在の祖父母はまだ自分たちの親すなわち曾祖父母が顕在であることが多いといえます。そのうち曾祖父は比較的早く他界しますが、曾祖母は90歳を超えても存命ということは珍しくありません。その曾祖母は要介護であることも多く、現在の祖父母はその面倒をみる必要があります。
一方の子供家族ですが、そのママは総合職であって、正規・非正規含めて外の仕事を続けていることが多いといえます。したがって、子育てをどうするかということがつねに大きな家庭内の問題であり、祖母が孫育て孫ケアでサポートしている、ということは一般的です。さらに育ジイも活躍ということになります。つまり現在の祖父母は自分の親と子供家族の両方の面倒をみるということになっています。「面倒をみられる祖父母」から「親と子供家族の面倒をみる祖父母」へと180度の転換といえます。これを「新3世代」と呼んでいます。
新3世代の消費
別項でも触れていますが、ランドセルは2~3月が販売のピークで最もセールをかけるときだと、常識としてはそうだと思われます。ところが、この10年ぐらいでそれが大きく様変わりして来ました。お気づきかと思いますが、現在、ランドセルのCMをよく見るのは、7~8月となっています。新学期が終わっているのになぜだと思われると思います。実は、その年の新一年生ではなく、その翌年の新一年生に向けたものであるわけです。つまり、夏休みの時期に祖父母がランドセルを買うので、そうなるわけです。なかにはイタリア製の17万円のランドセルもあったりします。新一年生の子供がイタリア製を欲しがるというようなことはあまりあり得ないので、これは祖父母がよかろうと思って買ってあげるわけです。新一年生の肩にはズシリと重いのではないかと余計な心配をしたくなりますが、かわいい孫が6年生まで使うものならできるだけいいモノを、というところです。
現在のファミリー消費のかなり部分が祖父母によって担われているということがいえそうです。とくに教育関係はおカネを惜しまないといえます。学校教育のDXも加速度的に進み、英語教育も小学校からになります。そこにも孫がおくれたり辛い思いをしないように、ということは親以上に祖父母が心配してPCやタブレット端末、英語教育ソフトに子供向け英語塾とおカネを出します。また、現在の祖父母はファッションや流行にも敏感といえます。孫にはそれなりのオシャレをさせてあげなきゃという気持ちもあります。また、現在の祖父母はテーマパークもその第一世代といえるわけで、テーマパークも旅行も自分たちも楽しみながらおカネを出すということになります。そこが一昔前の祖父母と大きな違いです。一昔前はテレビゲームも子供ブランドの服もよくわからずにおカネだけ出すというのが日本の祖父母でしたが、現在の祖父母は、むしろ親よりもよくわかっていたり、情報収集をして買い与える、しかも、それは半分どころかほとんど自分が楽しんでいる、という面もあるような消費になっています。
実際、当研究所の調査(全国、50-70代)で、「孫育てをまたしたい」という祖父母にその理由を聞いたところ、
1位 一緒にいると楽しいから刺激があるから 74.6%
2位 子供の家族を助けたいから 50.7%
3位 愛情・結びつき・絆を確認・強化したいから 39.0%
と「子供の家族を助けたい」を大きく超えて、「一緒にいると楽しいから刺激があるから」がダントツの1位となりました。
ファミリー消費は新3世代消費へ
こうしてみてみると、これまでファミリー消費というのはパパママと子供という核家族でとらえることがあたり前だと思われて来ました。CMでも一般的にはそう描かれていることが多いといえます。しかしながら、それが大きく様変わりしつつあるといえます。
これからはファミリー消費も、一般的なあり方が、核家族消費から「新3世代消費」へとシフトして行きつつある、と考えられます。いかに「新3世代消費」をとらえるか、そこに大きなカギがあるといえるでしょう。
核家族から3世代ネットワーク家族へ
わが国では、戦後、「大家族」から「核家族」へと家族形態が変化しました。高度成長期の都会の団地や郊外の戸建てはその象徴でした。それがいま、「核家族」から「3世代ネットワーク家族」へさらに進化しつつある、といえそうです。ある面では元に戻りつつあるように見えるところもありますが、大家族が封建的家長制度に支えられていたのに対して、いま到来しつつある「3世代ネットワーク家族」は自立した個人によるフラットなネットワーク関係といえます。デジタル化がそれを支えているということもいえるでしょう。すなわち、3世代家族のLINEもありつつ、たとえば、大ママと孫娘など個々にLINEで結び合うような関係です。
住居形態も大家族から核家族の頃は3世代同居が一般的でした。二世代住宅などがあったわけです。これに対し、現在、一般的になりつつあるのは「近居」です。お互いのプライバシーは守りつつ、孫育て・孫ケアなど必要な助け合いはできる、という住居形態です。具体的には隣居と一駅の距離が一般的です。敬老の日のプレゼントで何がほしいかの調査をしたことがありましたが、大パパ大ママがもらってうれいしいものの1位はモノをおさえて「みんなで食事」でした。しかも自分たちが祝われる立場にあるにもかかわらず、おカネは自分たちが出してもいいという割合が非常に多くありました。「3世代間のフラットなコミュニケーション」を求めているといえるでしょう。この3世代間をデジタルネットワークがつなぐからこそ、必要なこと、やりたいことはすぐに連絡がとれるし、外食やランドセル購入などの消費も生まれやすいといえるでしょう。