2025年人口構造激変
2025年に団塊と団塊ジュニアという二大人口ボリュームゾーンが50代以上に/経済回復に大きなインパクト

2025年、団塊と団塊ジュニアという二大人口ボリュームゾーンが50代以上になり、人口構造が激変 経済回復はインバウンドを凌駕し、若者の雇用・給与増にも貢献する新しい大人世代の旅行観光・飲食消費から
新しい大人世代が主流となる人口構造の社会へ
2025年、50代以上人口が全人口の50.3%となり、遂に全人口の半数を超えました。(総務省統計局人口推計2025年1月より算出)15歳以上人口のなかでは、56.6%となります。団塊ジュニア世代は一般に1971年から1974年に生まれた世代で、ちょうど、その全てが50代になったと同時にこのような人口割合となりました。まさに、団塊世代と団塊ジュニア世代というわが国の二大人口ボリュームゾーンが全て50代以上となりました。
これは今年だけの一時的な変化というわけではなく、今後ほぼ永久に続いて行きます。すなわち、残念ながら二度とふたたびわが国が若者社会に戻ることはない、ということです。上のグラフは、50歳を基準に人口構造を書き直したグラフで、1920年から2110年という約200年の変化を示しており、これを見て頂ければ、そのことは一目瞭然です。そうであれば、その新しい社会をどう創っていくのかを一刻も早く考えて行かなければなりません。とくに、これまで、このような人口構造の社会は誰も経験したことがないだけに、まさに未知への挑戦となります。これはAIなどのデジタルの進化と平行して起こり、 AIなどのデジタルの進化とほぼ同様のインパクトを社会全体にもたらすことです。
ここでひとつ大きなポイントがあります。それは、いままで一般的には高齢社会ととらえられて来たために、消費が低減し、社会保障費だけが増大するというイメージです。しかしながら、これからの新しい大人世代はそこを大きく変えて行く可能性があります。まず当面の経済回復に大きなインパクトをもたらす可能性があり、それを順を追ってみていきます。
インバウンド消費額8兆円超が年頭のニュースになったが、コロナ前は日本人50代以上(50+)で旅行消費額は10.3兆円
昨年から円安と相まってインバウンド観光客が目立ちます。2025年1月15日観光庁速報でも旅行消費額が8兆円超がニュースとなり、アパレル市場規模並となって、インバウンドが日本経済を支えるとまで言われています。
しかしながら、コロナ前の2019年の国内旅行消費額のうち、50代以上だけで10.3兆円(推計)ありました。2024年に飛躍的に伸びたとされるインバウンド消費を凌駕します。
また、国内の年代別旅行消費のうち、50代未満は、若者旅行、OL旅行、家族旅行とニーズも形態も様々であるのに対し、44.7%(2019年年代別旅行消費額)を占める50代以上(50+)は家族旅行を卒業し、基本は「仲間旅」「夫婦二人旅」で、これに「ひとり旅」「3世代旅」「母娘旅」が加わるということで年代による多少のニーズの変化はあっても形態は変わりません。
2019年(コロナ前)国内旅行消費額(観光庁)
年代別旅行消費額
2023年(コロナ後)旅行消費額(観光庁)
*コロナ後の最新年間統計となる2023年の国内旅行消費額は、2019年を超えていますが、これは、物価高が主たる要因で、旅行客数は減少したままであり、コロナ前までには回復していないとされています。
新しい大人世代がそこで働く「若者」や「女性」にプラスなるのであれば旅行観光・飲食したいは54.6%
さらに、そこで働く「若者」や「女性」にプラスになるのであれば、「旅行観光」や「飲食」をしようと思う割合は40-70代で54.6%と半数を超え、ここでも70代と女性がやや高いといえます。「若者」や「女性」のために旅行観光しましょう、と呼びかけることが新しい大人世代の「旅行観光」や「飲食」の後押しになるのです。
50代以上は「平日・オフシーズン」旅行で「若者・女性の雇用・給与増」に貢献
前述のように、国内観光客のなかで、50代以上の新しい大人世代は、44.7%を占めています。 金額で10.3兆円(推計)です。さらに重要なことは時間がある程度自由になるために「平日・オフシーズン旅行」に行くということです。つまり、現在、旅行観光関連業種、とりわけ旅館やホテルなどで人手不足がいわれます。それはコロナ離職が戻らないということもありますが、そもそも、平日・オフシーズンという波があるために、正社員が雇用し難いという問題があります。とりわけ、若者の失業率の高さがつとにいわれる沖縄はそうだ、といわれます。つまり、旅行観光関連業種の平日・オフシーズンの需要の平準化は、ビジネスの安定化と若者の雇用・給与増にとってきわめて重要だといえます。
わが国の個人金融資産2000兆円を超え、これを経済回復に活かすとき
昨年12月の日銀の発表で2179兆円と、わが国の個人金融資産は2000兆円を超えています。この個人金融資産はこれまでも経済活性化に活かすべきではないか、という議論がなされて来ましたが、残念ながら活かされないまま終わっています。そして、政府の資料でも、この個人金融資産の8割は50代以上が持っているとされます。コロナ後は、インバウンドもさることながら、この眠っているかに見える2000兆円を活かして旅行観光消費をはじめとして、日本の経済を大きく回復をすべきときだ、と思われます。
従来、20代・30代人口が中心だったときにはフロー(現役)からフロー(現役)へとおカネが回っていましたが、これからは、50代以上が人口ボリュームゾーンになります。そのときにはストック(含リタイア層)からフロー(現役)へとおカネが回って行く仕組みをつくらないと経済は回らないと言えます。これは「これからの経済」だということもできます。
新しいくらしを創ろう
新しい大人のライフスタイル
旅行のみならず、生活全体についても、50+中高年の新しい大人世代においては「これから自分なりのライフスタイルを創っていきたい」という割合が8割を超えています。(「シニアマーケティングはなぜうまくいかないのか~新しい大人消費が日本を動かす」拙著日経新聞社P.316) 従来は、50代以降は余生であり、終わった人として静かな老後の暮らしをし、介護に備えていくということでしたが、現在は、180度転換しつつあります。前述の旅行消費も全体のなかで大きなボリュームを占めています。また、2019年9月に創刊された初の60代向け女性ファッション誌「素敵なあの人」は創刊から3号連続完売、コロナ下で1.5倍の売上増でした。また50代以上女性生活情報誌の「ハルメク」は、47万部に達し、女性誌の発行部数でNo.1と言われています。40代から徐々にファミリーを卒業して行く大人世代が日本にこれまでなかった「新しい大人のライフスタイル」を創ろうとしています。この「新しい大人のライフスタイル」がこれから期待されます。新しい年大人世代を中心に、子供家族および若者とも連携しつつ、これからの「新しい大人のライフスタイル」が創られていきます。
日本型市民社会の創造
長く続いたコロナ下でプラス面を見つけることはなかなか難しいのですが、新しい大人世代の「自己管理」によって、諸外国に比べ相対的に低い感染率・感染者数にとどめることができたということはいえます。この「自己管理」によって、これから「日本型市民社会」が形成される可能性があります。政府に過度に頼らず、「自助」による自立した行動です。今後、50代以上がわが国の人口ボリュームゾーンであり続ける社会になります。これからより自立した市民による「日本型市民社会」が到来する可能性があるのではないかといえます。