ポストコロナ
経済回復は旅行観光・飲食消費から/インバウンドを圧倒し若者の給与増にも貢献する新しい大人世代
ポストコロナの経済回復はインバウンドを圧倒し、若者の雇用・給与増にも貢献する新しい大人世代の旅行観光・飲食消費から
2022.06-2024.07
新しい大人世代がコロナ後やりたいこと1位「国内旅行」2位「外食・グルメ」
当研究所の調査でも、40-70代がコロナ後にやりたいことの1位は「国内旅行」で、2位は「外食・グルメ」でした。とくに女性が高く、お仲間とのグルメツアーです。この世代向けの広告やCMも増えてきました。現在、円安もあってインバウンドが増大しています。後述しますが、実はこの年代がわが国の旅行観光においてインバウンド以上に大きなウェイトを占めています。
新しい大人世代のコロナ後の旅行観光消費意向ありは74.6%
また、40-70代にポストコロナの旅行観光消費意向を聞いたところ、意向ありの割合が74.6%に上りました。年代別にもほぼ同レベルですが、70代と女性がやや高いといえます。
新しい大人世代がそこで働く「若者」や「女性」にプラスなるのであれば旅行観光・飲食したいは54.6%
さらに、そこで働く「若者」や「女性」にプラスになるのであれば、「旅行観光」や「飲食」をしようと思う割合は40-70代で54.6%と半数を超え、ここでも70代と女性がやや高いといえます。「若者」や「女性」のために旅行観光しましょう、と呼びかけることが新しい大人世代の「旅行観光」や「飲食」の後押しになるのです。
旅行観光消費総額のうちインバウンドは17,2%、国内観光客が82.8%
現在、旅行観光といえばインバウンドです。インバウンドの回復があたかも旅行観光回復の全てのようにいわれます。しかしながら、コロナ直前2019年の観光統計をみると、国内観光旅行消費総額のうち、訪日外国人は17.2%です。そのなかで中国の観光客は3.6~4割です。中国から観光客が全て回復しても17.2%です。その意味では、やはり82.8%の国内観光客がまずしっかり回復して、訪日外国人とクルマの両輪になることが望ましいといえるでしょう。
50代以上は年代別で44.7%10.3兆円(推計)「平日・オフシーズン」旅行でビジネス安定化と「若者の雇用・給与増」に貢献
さらに、国内観光客のなかで、50代以上の新しい大人世代がどうかというと、44.7%を占めています。 金額で10.3兆円(推計)です。その残りは、20代若者旅行、30代OL旅行、40代家族旅行とパターンが異なるのに対して、50代以上は子育て卒業とリタイアがあるために、「仲間旅と夫婦二人旅」とパターンは同じです。さらに重要なことは時間がある程度自由になるために「平日・オフシーズン旅行」に行くということです。つまり、現在、旅行観光関連業種、とりわけ旅館やホテルなどで人手不足がいわれます。それはコロナ離職が戻らないということもありますが、そもそも、平日・オフシーズンという波があるために、正社員が雇用し難いという問題があります。とりわけ、若者の失業率の高さがつとにいわれる沖縄はそうだ、といわれます。つまり、旅行観光関連業種の平日・オフシーズンの需要の平準化は、ビジネスの安定化と若者の雇用・給与増にとってきわめて重要だといえます。
新しい大人世代はインバウンドの「2倍以上」
2019年の旅行観光消費額ベースで推計すると、日本人の50代以上で訪日外国人の2.15倍となります。また、観光客数ベースでみると、京都市の観光統計から、京都は50代以上女性だけで、インバウンドの2.35倍、50代以上全体では3.5倍になります。京都では、コロナ以前に訪日外国人がコンビニで買って夕食を済ませるということも言われましたが、やはり食文化を育むという意味でも「湯葉」や「豆腐料理」は大切ですが、誰がこうしたそれなりに高い料理を食べてくれるのかといえば、やはり、50代以上の国内観光客とりわけ女性達といえます。これをはじめ、インバウンドで観光地が荒れるという問題もしばしば指摘されましたが、その意味でも、国内の50代以上の国内観光客は文化を育てて楽しむということに意義を感じてくれます。そのように観光地サイドからお願いすれば喜んでやってくれるでしょう。
このように、量的にも質的にも、50代以上の新しい大人世代の国内観光客で、ベースをしっかり固めて、その上で訪日外国人を迎えることが観光地にとってもベストな選択だと思われるわけです。
わが国の個人金融資産2000兆円を超え、これをコロナ後の経済回復に活かすとき
今年3月の日銀の発表で2023兆円と、わが国の個人金融資産は2000兆円を超えています。この個人金融資産はこれまでも経済活性化に活かすべきではないか、という議論がなされて来ましたが、残念ながら活かされないまま終わっています。そして、政府の資料でも、この個人金融資産の8割は50代以上が持っているとされます。コロナ後は、インバウンドもさることながら、この眠っているかに見える2000兆円を活かして旅行観光消費をはじめとして、日本の経済を大きく回復をすべきときだ、と思われます。
従来、20代・30代人口が中心だったときにはフロー(現役)からフロー(現役)へとおカネが回っていましたが、これからは、50代以上が人口ボリュームゾーンになります。そのときにはストック(含リタイア層)からフロー(現役)へとおカネが回って行く仕組みをつくらないと経済は回らないと言えます。これは「これからの経済」だということもできます。
中高年大人世代の3回目ワクチン接種すなわち「自己管理」に続く若者世代の接種が第6波を徐々に沈静化
2021.11-2022.05
なかなか沈静化しそうで下げ止まりが続いていた第6波ですが、ようやく東京都に関しては、沈静化の方向にすすみつつあります。これは中高年大人世代の3回めワクチン接種の高さに対して、とくに4月に入って、20代・30代の3回め接種がすすんで来たことがその要因と考えられます。
第5波同様、中高年大人世代から若者世代へと広がる「自己管理」が感染者減につながっている、とみられます。このまま若者世代の3回め接種がすすんで行けば、次の波が来る気配があってもかなり未然に防げる可能性があるのではないでしょうか。
また、この間に「経口薬」が整備されれば、いよいよ、コロナの出口も見えて来たといえるかもしれません。
中高年大人世代から若者世代へと広がる「自己管理」が感染者激減に。
2021.07-2021.10
新規感染者とワクチン接種者数の動向
日本のコロナウィルス感染者数は第5波の緊急事態宣言解除以降激減しています。その要因がよくつかめずにいますが、月別/年代別のワクチン接種者と新規感染者数の推移をみると、ワクチン2回接種者が8月時点で60代50.4%、70代76,4%、80代以上76.9%であり、そもそも第5波の8月時点で60代以上は新規感染者が少ないといえます。しかしながら、9月、10月と50代以下のワクチン2回接種者が飛躍的に多くなり、それに伴って、新規感染者が激減しています。とくに10月に20代、30代のワクチン2回接種者が大きく増えたことが10月の新規感染者の激減を生んだといえます。*東京都データに顕著にあらわれていますが全国的に同様の傾向といえます。
中高年大人世代の高接種率から若者世代へとワクチン接種がすすんだことがこの感染者数の激減となった要因といえるでしょう。
諸外国との比較
諸外国と比較した場合に、イギリスなどワクチン接種率の高い国で新規感染者数の増大が見られます。それらの国との比較でいえば、それらの国では解放感からか、マスクなし、三密行動がみられます。これに対し、わが国では、「マスク」と「ソーシャルディスタンス」という「自己管理」が徹底しています。これは中高年大人世代から若者世代まで全世代を通じて、徹底されています。
第1波から第3波で、わが国の新規感染者数が諸外国と比較して相対的に少なかった頃は、「ファクターX」と呼ばれました。その時点では中高年大人世代の徹底した「ステイホーム」がその新規感染者数の少なさを生んだということで、中高年大人世代の「自己管理」ということを指摘しました。(下段「世界における日本の大きな特徴は、感染者数・死者数の少なさにあります。」参照)
その意味では、今回の第5波後の新規感染者激減は、中高年大人世代から若者世代へと広がった「ワクチン接種+自己管理」が生んだといえます。「自己責任」は、まさに自己責任の国アメリカで国民皆保険のないことが感染当初に病院に行けずに感染爆発を生んだように社会的破綻と隣り合わせといえます。これに対して、積極的なワクチン接種自体も「自己管理」といえ、わが国の中高年大人世代から若者世代へと広がる「自己管理」が当初の新規感染者数の少なさ、そして現在の新規感染者数の激減も生んでいる、まさに、世界のなかの日本の特性といえます。
*ここから先は50+世代による「自己管理」パワーによる第1~3波の日本の新規感染者数の少なさに関するものです。2021.04.01にアップしたものです。
世界における日本の大きな特徴は、感染者数・死者数の少なさにあります。
2020.01-2021.06
そのファクターXの原動力は“50+「自己管理」パワー”
日本は当初から60代以上の感染者数が少なかった
-50代は60代以上に比べると全体にやや高いが、それでも他の年代よりは低めの傾向-
しばしば話題となった世界のなかの日本の感染者の少なさは50代以上の「自己管理」と世代連携によるとみられます。
(50+「自己管理」パワー=世界にも類のない感染数の少なさを生んだ)
- 初期の段階から、60代以上の中高年感染者が少ないことが報道され、6月からは40・50代も追随しました。
ワイドショーの視聴者である多くの50代以上がテレビを見て自発的に自粛した「自己管理」によるとみられます。
(死者数の少なさも60代以上の感染者が少ないことが要因とみられます) - その後20・30代も外出自主規制し、第一波、第二波においては実質的な世代連携が働いたといえます。
- 60代以上は自分が感染しないことと同時に他者に感染させない、とくに若い世代に迷惑をかけたくない気持ちもあるとみられます。
- 第三波では50・60代以上の感染者の割合が増えたとされますが、やはり後半は減少して全体の波の沈静化にも貢献しています。
日本とは対照的に、アメリカも中国も欧州各国も60代ないしそれ以上の感染者が多いといえます。
とくに高齢化率が日本と近いイタリアは60代以上の感染者がわが国の2倍にもなり、それが感染者・死者数の違いになってあらわれています。
イタリアとの違い
イタリアは大家族で、無症状感染者の若者から高齢者に感染したとされます。日本は核家族であり、家庭内で若者と高齢者が接する機会が少なく、その高齢者が初期段階から外出等を自粛したことが功を奏したとみられます。
韓国は感染者数全体も60代以上感染者の割合も日本と近い
韓国は感染者数も欧米に比べて少なく年代別でも日本と似ています。両国を比較すると、韓国は「政府主導」型であり、日本は生活者の「自己管理」型といえ、そこが大きな違いといえます。
「自己責任」の危うさに対して「自己管理」の確かさ
「自己責任」の国アメリカでは国民皆保険のないことが、医者や医療機関での検査・診断行動を鈍らせ感染拡大されたとされます。自己責任は立派かもしれませんが、社会を破綻に導く危険性と背中合わせだともいえます。日本では中高年50+世代の「自己管理」が感染拡大を抑制しました。ひと昔前までは、「政府が悪い」「政府は何もやってくれない」という議論が横行しがちでした。今回のコロナウィルスでは、政府が何かをやってくれるのを待つのではなく、テレビなどから情報を日々入手しつつ、全国の中高年世代とりわけ60代以上が感染初期から自主的自発的に「自己管理」をしたことが感染者数・死者数の抑制を実現させました。政府に過度に頼らない「自助」が大きな成果を収めたといえます。
テレビと50+世代との共創
感染初期から60代以上が自発的に自粛したのは、最初に感染が発見されたのがダイヤモンドプリンセス号だったことも大きな要因といえます。ここに60・70・80代がかなり乗船していて、その年代に感染者が多く、そのことがテレビのワイドショーを通じて詳細に伝えられました。これにより、とくに60代以上の自己管理意識が高まったといえるでしょう。このテレビと50+世代の共創状態が、こうした「自己管理」行動を生み出した、といえます。世界でもあまり例をみないとされるわが国の感染者数・死者数の抑制はテレビのワイドショーと50+世代の実質的な連携で達成したといえます。
若者に迷惑をかけたくない
60代以上の「自己管理」は自分が感染したら大変だという意識がまず第一だといえますが、片方では他の人に感染させたくない、自分が感染者にならないようにしたいという意識もあるとみられます。それは同世代に対してもありますが、若者に感染させたくない、あるいは、自分が感染することで若い世代に負担をかけるようなことはしたくない、という気持ちもあると見られます。これは普段の生活でも若者に迷惑をかけたくない、負担をかけるようなことはできるだしたくないという意識があり、新型コロナのようなときには、よりそういう気持ちにもなるとみられます。
ニューノーマルは“検査”と“大人の距離感”と“分散化”
時代は進化しています。新型コロナを機にデジタルテクノロジーに医療テクノロジーも加わった生活がこれからより求められるようになるのではないでしょうか。すなわちPCR検査・抗原検査やワクチン接種等が日常的に出来て、「無症状の感染者」が市中を歩くのではなく、ただちに隔離に入る。症状が顕在化すれば医療施設に入る、ということが当たり前になる生活が望ましいといえます。
また、マスク着用は当然として、ソーシャルディスタンスが示した生活とは“人と人とのいい距離感”です。それはまさに「大人の距離感」といえます。
さらに、中高年大人世代も外出自粛のなか、少なからずオンラインコミュニケーションにチャレンジしました。そのオンラインコミュニケーションが示唆したのは「二地域居住や移住などによる分散化」の可能性といえるでしょう。
消費回復は給与が低減しがちな現役世代に比べ1900兆円の多くを持つ中高年大人世代から
2020年3月の日銀の発表で、2019年12月現在のわが国の個人資産は1900兆円に達し、うち1003兆円は現金・預金とされます。その多くは中高年大人世代が持っています。一方、コロナショックで飲食店等の廃業などで若い世代の給与は厳しい状況となっています。その若い世代に消費回復の全てを期待するのはなかなか難しい面もあります。その意味ではなかなか活かせなかったわが国の個人資産1900兆円は中高年大人世代が動き出すことで、消費回復の大きな力になるといえます。
旅行・外食などの「消費回復」と「若者の雇用」も中高年大人世代から
中高年大人世代がコロナ後の消費としてしたいことの1位が「旅行」で2位が「外食」でした。おカネも時間もある中高年大人世代が本格的に動き出せば消費回復も大いに期待できることになります。そのことによって、旅行観光で働く若者、外食産業で働く若者の雇用を生み出すことができます。「若者の雇用」という意味でも中高年大人世代の消費は大きく貢献できるといえます。
インバウンドより前に圧倒的多数の国内の中高年大人世代をとらえる
インバウンド(訪日外国人旅行客による観光)がなくなって旅行観光ビジネスは大打撃といわれますが、実は、インバウンドは2019年の観光庁の発表でも、国内旅行消費の17.2%に過ぎません。残りの82.8%は国内観光客であり、かつそのうちの44.7%は50代以上によるものです。
実際、新型コロナウィルス前においても、京都の観光客は日本人の50代以上女性客だけでインバウンドの2.6倍ありました。この中高年大人世代の旺盛な旅行消費の回復が旅行・観光ビジネス全体にとって先決でありかつ決定的な意味を持つといえます。
さらにいえば、インバウンドはこうした外的要因や海外事情によって左右されがちですが、国内の中高年大人世代の旅行需要は安定的といえます。この安定的な需要をベースとしつつ、その上でインバウンドを考えれば、各種の変動要因によってあまり左右されずに比較的安定した旅行観光ビジネスを展開できるといえます。
中高年大人世代は「平日消費」・「オフシーズン消費」
とくに中高年大人世代の旅行消費の特長は、「平日消費」と「オフシーズン消費」です。とくにリタイア後は時間があるために、自由に時間が使えます。わざわざ混み合う「休日」や「連休・夏休みなどの旅行シーズンのピーク時」に出かける必要はありません。
むしろ、「平日」や「オフシーズン」に出かけてゆっくりと外食や旅行を楽しむことができます。そのことはビジネス側にとっても休日や旅行シーズンに片寄らずにコンスタントな来客や観光客が期待できるため、大きなメリットがあるといえます。
新しいくらしを創ろう
新しい大人のライフスタイル×ニューノーマル
50+中高年の新しい大人世代においては「これから自分なりのライフスタイルを創っていきたい」という割合が8割を超えています。(「シニアマーケティングはなぜうまくいかないのか~新しい大人消費が日本を動かす」拙著日経新聞社P.316) 従来は、50代以降は余生であり、終わった人として静かな老後の暮らしをし、介護に備えていくということでしたが、現在は、180度転換しつつあります。前述の旅行消費も全体のなかで大きなボリュームを占めています。また、2019年9月に創刊された初の60代向け女性誌「素敵なあの人」は創刊から3号連続完売でした。また50代以上女性誌の「ハルメク」は、35万部に達しています。40代から徐々にファミリーを卒業して行く大人世代が日本にこれまでなかった「新しい大人のライフスタイル」を創ろうとしています。この「新しい大人のライフスタイル」と「ニューノーマル」を掛け合わせた「新しいくらし」がこれから期待されます。中高年大人世代を中心に、子供家族および若者とも連携しつつ、これからの「新しい暮らし」が創られていきます。
日本型市民社会の創造
この「自己管理」によって、これから「日本型市民社会」が形成される可能性があります。政府に過度に頼らず、「自助」による自立した行動です。今後、50代以上がわが国の人口ボリュームゾーンであり続ける社会になります。単に50代以上は我慢していた、自粛していたということだけにとどまりません。これからより自立した市民による「日本型市民社会」が到来する可能性があるのではないかといえます。