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健康寿命に誤用心

使われ方がちょっと違うのでは

イメージ:健康寿命に誤用心

現在、健康寿命は男性が72.68歳 女性が75.38歳。

男女それぞれ健康寿命を超えた方々をみてみると、男性は、たけしさん77歳、高田純次さん77歳、タモリさん78歳、吉田拓郎さん77歳、宇崎竜童さん77歳、桂文枝さん80歳、関口宏さん80歳、日野皓正さん81歳、石川次郎さん82歳、加山雄三さん86歳、田原総一朗さん89歳、女性をみると、阿木燿子さん78歳、吉永小百合さん78歳、川久保玲さん81歳、コシノジュンコさん84歳、黒柳徹子さん90歳、草間彌生さん94歳とかなりいらっしゃる。それは市井の一般人でも同様です。健康寿命を超えてごく普通に暮らしておられる方々は沢山おられます。

平均は便利なようですが、平均で見てしまうと、現実とそぐわないことも多々出て来ます。笑い話のようですが、一昔前の広告業界で、業界人の平均寿命62歳といわれていたことがありました。「オレもあと2年の命だ」と冗談を言いながら定年退職をする先輩を見送ったこともありました。なぜ62歳だっかといえば、若くして亡くなる人たちがかなりいたからです。それは一昔前の業界人の生活が不規則な生活の上に深酒とヘビースモーカーが日常であり、それで現役時に命を縮めた業界人が少なからずいたからです。そのことにより、平均で計算すると62歳になってしまったわけです。ところが筆者も62歳をかなり過ぎてしまいました。実際には62歳どころか、70代、80代とお元気な業界人も沢山いらっしゃるわけです。

健康寿命はWHOが提唱したもので、「平均寿命と健康寿命の差」が最も大きな問題であり、それを縮める努力ないし政策をとる必要がある、わけです。あくまでその「差」に問題があります。上記健康寿命と同じ2019年の日本人の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳であり、「男性8.75年」、「女性12.06年」の差です。この差を縮めて行くことが重要であり、そのために介護予防、”高齢者の病気”予防などがはかられる必要があるわけです

したがって、「健康寿命が何歳であり概ね健康でいられるのはそこまで」ととらえるためのものではない、ということです。

実は、75歳以上の後期高齢者で要支援を含めた要介護率が31.3%であり、68.7%つまり約7割は非要介護であり、それなりに元気だということがいえます。 75歳は男性の場合健康寿命を3年超えたところであり、女性の場合には健康寿命とほぼ同じにあたります。実際には「健康寿命を超えた75歳以上でも7割はそれなりに元気」なのです。

したがって、若い人たちが「元気でいられるのも73歳まで」と考えてしまうのは健康寿命の誤用といえます。人生100年を考えるときに 「元気なのは73歳まで」と考えてしまうと現実とは大きくかけ離れてしまい、見誤る危険性がきわめて高いといえます。平均のワナといえるかもしれません。

そうではなくて、75歳以上の後期高齢者の「要介護率31.3%をいかに低減させるか」、と考えることが、きわめて重要であり、具体的な方策を実行することが必要です。すなわち「介護予防」です。要介護率が低減できれば、その分、要介護状態にある人たちにより厚い介護を可能にすることになるということもいえます。平均値としての健康寿命もより長くなることは言うまでもありません。

「健康寿命の誤用を避ける」ということは「人生100年時代」を考える上できわめて重要なことだといえます。

※平均寿命/健康寿命:厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」(令和3年12月20日)より
※要介護率:総人口:総務省統計局「人口統計」H30/1/1確定値に要介護人口:厚労省老健局「介護保険事業状況報告」h29年度末年報を掛け合わせて、未来ビジョン研究所にて算出