新しい大人市場を引っ張る女性たちPart5
食/グルメ欲
食/グルメ欲
リーズナブルな出張シェフでおうちグルメ
前回、山本さんから旅欲で日本国内旅行にもう一度目を向けるというお話があったんですが、そういうことを含めてグルメ欲はどうですか。
どうですか、グルメ欲。
いいですか、私。
どうぞ、もうグルメ欲満開で。
私ももちろんそうですが、皆食べ歩き飲み歩き大好きですよね。それがコロナで一変。外に出られない代わりに、おうちグルメがもうとんでもなく進化した。家で気軽にレストランを楽しめるようになりました。コロナ明けた今もそのサービスは健在で、人のグルメ欲やグルメ行動は確実に変わったと思います。
なるほどね。おうちグルメね。
まず家の中でおいしい物を食べる、Uber Eatsや出前館などのサービスがすごい。
フードデリバリーサービスですね。
そう、アプリをひらけばどんな食べ物でも飲み物でもスイーツでも、本当に何でもある!これまでは絶対テイクアウトなんて出来なかったレストランや予約困難店もデリバリーサービスに登録してますよね。それもすごい。
さらに内と外がシームレスにつながったなと思うのが、出張シェフサービスがとっても身近になった。
そんなにすごく高額じゃない。
なるほど、出張シェフ。確かに。
そう!思ったよりもリーズナブルで、出張費材料費全て込みで1人数千円。フードデリバリーサービスも意外と高いから、それにちょっと上乗せしたくらいの金額で家にシェフが来て素敵な料理を作ってサーブしてくれるってすごくないですか?しかも皆大喜び。
友だちが?
そうです。友達も家族や親戚も皆すっごく喜んでくれる。ホームパーティのハードルが一気に下がったように思います。迎える側も行く側も、俄然気楽ですよね。しかもちょっとかしこまった感じも出せるようになったのでホームパーティの幅も広がった。
こうなってくると、これまでの手料理前提パーティは用意するのも持ち寄るのも、お互いちょっと気疲れが過ぎてたことに気づきます。(笑)
持ち寄りではなくて。
そう。呼んで作ってもらうのであれば、予算も外でご飯食べるのとそこまで変わらずに準備や片付けもお任せしたまま、ホストもゲストも何の気兼ねもなく楽しめますから。そしてもちろん美味しい!ホームパーティの開催数は爆増しました。実際コロナを経て出張シェフサービスは乱立し、それぞれユーザー数を伸ばしているようですよ。
それは確かにね。
あと最後に、会員制紹介制レストランも!
コロナ前からこの流れはありましたけど、さらに増えていると思います。
会員制や紹介制レストランといっても限られた人しか入れないキラキラした超高級レストラン!というわけではなくて。実際アクセスするにはクラウドファウンディングなどで会員権を買ったり知り合いをたどらないといけないのでちょっとした特別感はあるんですが、価格は良心的。たいていどのお店も非常にコスパがいいんです。そのバランスが今っぽい。
そういったお店が人気なのはコスパや味もありますが、何より居心地の良さだと思います。お店も初めから常連のような扱いをしてくれますし、お客同士も、初めましての方でもなんとなく仲間感がある。自宅ではないレッキとしたソトなんだけど、ウチ感がある。やっぱりこれも、ウチとソトがシームレスにつながっているんだと思います。
グルメ欲とおうち時間
私は料理を作るのも大好きだし、植物とか、いろいろと育てることが大好きなので、家にいることも多いんです。コロナからは、パンも焼くようになりました。パンもオーッみたいな、みんなが驚くようなのを、先生にZoomで習ったりして。私があんまりにも何度もそのパンを焼いて、facebookにアップするので、ついに先生から、免許皆伝しようかみたいなことを言われ—。何度も作ると上手くなりますからね。ウフフ。
へー、ほんと。
コロナ禍は、時間があったから、ベランダでモクモクと燻製に凝ったりもしました。買ってきた沢庵で、いぶりがっこ作ったり、ハーブを種から育てて料理に使うというようなことをやったり。時間をかける料理も作るようになりました。今年は、田舎から摘んできたカモミールやローズヒップでハーブティーも作りましたね。ローズヒップはすごく面倒だった。もう作らないかな。笑。昨日は、渋柿を一箱田舎から買ってきて、干し柿も作りました。忙しい時ほど、作りたくなるのです。
分かります。
そして人を呼んで、食べてもらう。
なるほど。
だから家で。
コロナで身についたのかな。
ご近所の仲間との誕生日会は、これまで外でやっていたのが、コロナでうちでやることになって、ケーキどうするって言われたので、じゃ焼きましょうと。これまた、ケーキの先生に習って。私ケーキも最近うまくなっちゃって。ホールケーキ買うと高いけど、自分で作れば、リーズナブル、甘さも控えめ。(笑)
なるほど。
シフォンケーキの超おいしいのを焼けるようになったんです。クリームたっぷりフルーツモリモリの。
シフォンケーキ!
私は、ケーキの型だけ買いました。
一番大きいやつね。
そう、まだ作ってはないんですけど、やりたいなっていう思いが溢れました。(笑)
いいねェ。
アールグレイベースでスパイシーな紅茶葉の粉を入れて、シフォンを大人味にするんですよ。
おいしそうですね。
今度いただきに行きましょうか。
実は前の日から作んなきゃいけないんですよ。
前の日から?
逆さまにして、置いておかないといけないんです。さらには―――家で食べることが多いと、自分でお皿なんかも焼きたくなってきて焼き物もやるようになりましたね。たまに夫には嫌がられますけどね。「変なの焼いてきた」とか。失礼ですよね。
焼き物ね。器でね。
器で食べさせるってなって来るね。
自分で焼いた物はちょっと欠けたりするじゃないですか。これは食洗器に入れないでよと言っているのに夫が入れてしまったりとかして。ちょっと欠けちゃったりすると今度は金継ぎを始めたら、それはそれでもう大丈夫かみたいな。
わー!私も金継ぎセット買いましたー!
結構楽しいですよね。
時間を忘れて熱中しちゃうんですよね。
きらきらするから。金継ぎね、欠けた所に金で継ぐじゃないですか。
ね。お皿が欠けても、金と漆と粘土でこうピタッてくっつけて直せるんですよ。
それをすごくまたリーズナブルに教えてくれる先生がいて。
習いたい。
ほんとにね、数千円で教えてくれる人がいる。そしたらほんとに私のお気に入りのお皿がさらに良くなった!みたいな。
金継ぎしたお皿、カッコいいですよね。昔の人で、あえて一回割ってくっつけている人もいましたよね。本阿弥光悦。
本漆は高いと思うけれど、ハンズなどで売っているものだったら手も出しやすい。そんなことをやったりしているともうなんか際限なくなっていきます。(笑)
生活リズムも変化し健全に
コロナを経て、圧倒的に夜早く寝るようになりました。
確かに。コロナのときは、旅館みたいな感じになってきちゃって。なんか日が沈み始めるとお風呂に入り始めて、ご飯の前に必ず全員お風呂にみたいなね。
なるほどね。
私も同じ生活リズムでした。だから最近久しぶりに外食して家に帰った時、あれ?まだお風呂にも入ってないのにこんなに疲れてて、しかもこんな時間!?うっそー!ってショックを受けました。(笑) 家だと、ご飯の前にお風呂に入るから、のーんびり好きな物を食べて飲んでダラダラして、眠くなってきたらそのまま寝られるのが本当に幸せ。
健全、健全。
うち早いですよー。5時半ぐらいにはお風呂入れ始めますからね。人が来る時も、その前に夫とか風呂入っちゃって。私も、ノーメイクでごめんなさいみたいな感じで会う時が多いかも。
だから結構コロナを経験して、意外に人の生活がどんどん戻ってきたっていうか、自然の生活に戻ってきているところがありますよね。
そうですね、生き物として正しく。
正しくなってきた。ちょっと。
昭和の感じになってきた。(笑)
昭和の感じ。いや、でもほんとに自然な。
今思うとなんて不健康なことばかりしていたんだろう、と思うんですよね。
そうそうそう。
朝まで働くのが普通。夜中の打ち合わせもまぁあるよねって感じ。そろそろ太陽が出て明るくなる時間だから家帰ろう、というような感覚だったじゃないですか。仕事だけじゃなくて皆で食事に行っても2軒目3軒目と飲むのが当たり前で。今思うとなんかおかしいなって。(笑)
おかしいなと。
バブルで下からお立ち台が上がってきて登っていた時代は何だったんでしょうね。
何だったんでしょうね。
よくテレビで出る風景。
万札こんなに持ってタクシー停めるやつ?(笑)
あれはちょっと後なのね。
そうなんだ。
まあそれもね、全員がそうやったわけじゃないけどね。広告業界なんかにいたからそんなことになったんだと思いますよ。
プロジェクトメンバーが(超多忙の)売れっ子ばかりで皆の予定が合わないから深夜3時から打ち合わせね!とかもありましたよね(笑)
そうそうそう。
流石の広告業界も、より健全に変わりつつありますね。ちょっと話を戻すと、やはりおうちグルメは今後もありそうですね。おうちグルメにこれからのビジネスチャンスというか、加工食品は常に家に届く物だから、そこがもちろんありそうです。それからさっきの金継ぎじゃないけども、そういう教室とか、教えるサービスとか、ソフト的なところにまたビジネスの機会がありそうです。
手ざわりのある生活への原点回帰。
「暮らす」っていうことに対して。
そうそう、「暮らす」っていうところにビジネスチャンスがあるわけですよね。「生活」に。
すごく。
お皿の数とかも絶対各家で増えていると思います。
お皿ね、そうそう、おうちグルメであればある程、盛り付けや料理の見せ方も大事になって来ますね。よりおいしくお家で食べる、友人や仲間を呼んでおいしく食べる。そのためのお皿などの食器、そしてカトラリーなども揃えたいですよね。ただの食器棚ではなく、お皿など食器のギャラリーなどもありそうな気はします。
断捨離からリサイクルするマーケット
一方で断捨離も増えていますね。
それでメルカリも増えています。
メルカリ、確かに。
ぐるぐる回っている。
そうですよね、セカンドマーケットで回り続けるみたいな。
うちの2階にセンスのいい若夫婦が住んでいるんです。そこがもう一人赤ちゃんが生まれるので、断捨離を始めまして。わが家はコーポラティブハウスなので、1階に彼女たちが木の机を出して。どうぞご自由にお持ちくださいって色々と素敵なものを出す。
ガレージセールみたいな。
センスがいいから、出しておくとすぐになくなっているの。私も頂いちゃったりして。(笑) それは無料でどうぞ、でしたけれど、みんなでガレージセールもやるんです。チラシ作って告知して。目玉商品決めて。そしたら、開店前から列ができたてりして。そこに便乗して私もいらないもの出して、売ったりして。楽しいです。
ちょっとしたお祭り気分。
今ニューヨークでも流行っているらしいですね。ニューヨークでは元々文化として、家の中のいらない物とかを道路に出しておくと誰か持っていってね、ということらしいんですが、今の時代はそれをSNSにあげる人がいて、それをみて欲しいものがあったら急いで取りに行く!って感じみたい。
どうぞご自由にって、外に置いておく方のね。テレビか何かで出ていましたよ、それ。
アメリカもそういう点はいいですね。
イースターというSNSアカウントがあります。投稿アカウントで。
今日出ているみたいな。
そそ、今日こんなのここに出ているというのを紹介しているアカウントです。ちょっと良さそうなものには見た人が殺到しているらしくて。争奪戦。
もしかしたらそういう、もう少しカジュアルに身近な所での物を回すC to Cみたいなサービスとかも――――。
お金とか関係なく。
これからね。
私はお買い物も好きだし定期的に断捨離するんですけど、もったいなくて。新しいし絶対使えるし欲しい人もたくさんいそう。今の私のライフスタイルに合わなくなっただけ。でもひとつひとつメルカリに出すのは手間だし面倒…。そして別にお金が欲しいというより、捨てる罪悪感から逃れたかったり、気に入っていたものを誰かに受け継いで欲しいっていう思いだけなんですよね。
確かにね。
フリーマーケットも今の時代あまりないし。
それも準備とかもいろいろあるからね。
行き場がない…
よく言われてはいますが、全部捨てないで回して行く、というようなことが、これからではないでしょうか。ファッションでも濱口さんの世代からですよね、若い女性が古着屋さんに行くようになったのは。これまで、大量消費は大量廃棄とワンセットだったけど、やはりそれが今大きく変わろうとしているということはいえそうですね。
―――――食/グルメ欲もコロナを経てこれまでとは異なるカタチが出て来ました。やはりそれは「おうちグルメ」に現れたといえそうです。なんといっても可能にしたのはフードデリバリーサービスです。出前という従来型にとどまらずに、いままでレストランで外食していた料理を頼んでおうちグルメをするということが広がったといえます。また、コロナ前から少しずつ利用されていましたが、濱口真彩子さんの言う「出張シェフ」ですね。シェフの店に行くのではなく、シェフに家に来てもらうということで、内と外がシームレスになって来たといえます。
さらに、在宅時間が長かったこともあって、朝昼夕のタスクとしての料理だけでなく、山本貴代さんのように、パンを焼いたり、ハーブを育てたり、と楽しむ料理も広がったり、シフォンケーキもつくり、スパイシーな紅茶も入れるなど、おうちにいる生活時間を楽しむ工夫が生まれたといえそうです。そのことで、より素敵な食器やカトラリーを揃える、さらには自分で器を焼く、というようなところにも広がりが出て来たように思います。
また、このグルメと関連しながら、より自然な生活の仕方がコロナ下ですすみ、さらには、大量消費で一般的だった「捨てる」から「回す」へと消費も変りつつあるということがいえそうです。
(所長談)
(次回は「健康欲」です。お楽しみに。)