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新しい大人市場を引っ張る女性たちPart3

世直し欲

ラボトーク第1回Part3 山本貴代・阪本節郎・濱口真彩子

各論スタートにあたって

コロナ禍は約3年と想定を超えて長いものでした。この間、実は「新しい大人女子」について大きな動きがありました。初の60代向け女性ファッション誌として宝島社から「素敵なあの人」がコロナ直前の2019年9月に新創刊され、創刊3号連続完売というロケットスタートをし、さらに昨年9月の同社発表では前年比売上1.5倍とコロナを吹き飛ばす勢いです。また、女性生活情報誌「ハルメク」は48万部に達し、なんとわが国女性誌全体でNo.1、という発行部数となりました。おそらくわが国の「女性誌」で最もパワーのあるのはこの50・60代女性誌といえそうです。
とくに、「素敵なあの人」で特徴的なのは、シニアという言葉を一切使わず、考え方としてもシニアを全て排除したところに成功要因がありそうだということです。
まさに、「新しい大人市場を引っ張る女性達Part1」にある「新しい大人女子の逆三角形」すなわち、これからの「新しい大人女子」たちは、年齢を重ねると先細りして行く「正三角形」から年齢を増すごとに太くなる「逆三角形」へ、という山本貴代氏の理論が現実化した、という局面となりました。これからますますこの傾向が強くなるでしょう。各論では、各生活領域においてどのような可能性があるのか、を探って行きたいと思います。

世直し欲

女性の育て欲・世直し欲(社会改善意識)

これまでは「新しい大人女子」とは、といういわば総論でしたが、いよいよ、世の中も実質的にコロナ後の社会に入って来たと思います。そのなか、各論の第1弾は「女性による世直し」です。「新しい大人女子の逆三角形」パワーをもって、これから「女性による世直し」が始まりそうな気配です。
「新しい大人女子理論」を受けつつ、山本貴代さん、濱口さんそれぞれの考える「女性による世直し」が語られます。コロナ禍も振り返りながら、そこで変わったこと気づかされたことがこれからの「世直し」に大いに活かされるのでは、従来の男性主導の改革とは違う「女性による世直し」が始まるのでは、というホットなトークです。

阪本節郎

山本貴代さんは「世直し欲」と言っています。また、濱口さんもポストコロナで「これからはコロナ下で言われて来たニューノーマル」であり、そのなかで女性が影響力を及ぼすのではないか、と言っていました。私もこれからの世直しは女性が重要というか、むしろ主役というか、中心的な役割をする、という気がします。そうすると、これからは男がしてきた世直しとは違う世直しがこれから始まるんじゃないかという気もするんですけど、どうでしょうか。

山本貴代

女性ってやはり子どもを産めますよね。産む産まないに関わらず、まず機能として、産んで育てるっていうなんかすごいことをできると思うんです。「育てる」っていうのは別に子どもだけじゃなくて、「世の中を育てていく」というような、すごく女性は大きな心で目先の利益とかそういうことじゃなくてやっていけるんじゃないか、と思います。例えば、女性で結婚していない人、あるいは結婚していてもお子さんがいない人は沢山いますが、そういう人たちも「何か育てたい」っていう欲望は昔聞いたことがあるんですよ。子どもはもう産めないし、でも育てたいっていうように。

阪本節郎

「育てたい」という気持ちね。

山本貴代

例えばフォスターペアレンツとか、アフリカの恵まれない子どもたちであるとか、カンボジアに学校建てるとか、そういうのにちょっと関わりたいという気持ちがあります。実際に例えば私の運営している女の欲望ラボの女性でもそうだったんだけど、アフリカの難民の子とかと文通だけじゃなく一歩先で、私は英語ができるから通訳の仕事をすると言ってボランティアまでやった人もいました。実際にフォスターペアレンツみたいになったらアフリカまで旅行して子どもに会いに行っちゃうとかね。

阪本節郎

確かに。

山本貴代

一歩先のことをやって、ただお金を送るというだけではなく、そこで関わっていく。別に会社員とかじゃなくても何か自分なりにできることっていうのに関わって、少しでも世の中良くしたいっていうこともあります。「育てる」っていうのは、得意だったりもするので。

対談中の山本貴代

阪本節郎

男性はあまりないですからね、そういうのは。

山本貴代

それは結構一つの特徴として「育て欲」というか、育てたいっていうのがある。

濱口真彩子

私とその周りの感覚で言うと、まだ育てたいまで思えている人は、まだ少数派かもしれないです。男性はやはりまだまだお金稼ぎたいとか。

阪本節郎

そうね、そうそう、お金稼ぎたい。

濱口真彩子

モテたいとか。

阪本節郎

そうそうモテたいとか。

濱口真彩子

なんか会社大きいほうがカッコイイよね!みたいなノリ。あとは「世の中を変えてやる!」みたいに主語が大きい。

阪本節郎

たしかにね。

濱口真彩子

一方女性ってそれでやるっていう人はあまりいないというか。別にそれがモテにつながらないからかもしれないんですけれども(笑)それよりもシンプルに身の回りのことでの違和感をなんか解決したいとか、それこそ女性として女性で働いていて、働きづらいところとかをどうにか改善したいとか、そういう結構「身の回りのことから何か改善したい」とか、課題を感じて、解決したい、ということが最終的にビッグビジネスにつながっていることもあると思います。

阪本節郎

なるほど。

濱口真彩子

なんかそういう人がすごく多いようなこともありました。

山本貴代

心地良くしたい、自分の身の回りのこと。

濱口真彩子

そうですね、「ちょっとこれ変じゃないか」というところからやって行く。

山本貴代

下から行く。

阪本節郎

割とこう、地に足が付いている。

濱口真彩子

そう、男性はやっぱ上からなので。

阪本節郎

そう、上から観念的だからね。

濱口真彩子

そう、だから「手触り」がある感じがします。

阪本節郎

手触りがね。男はややもすると大言壮語っていうか、まあちょっと自分のことのようで、ちょっと何ですけど(笑)

濱口真彩子

そういう意味で、女性の場合、「女性が働く」と「社会改善」が結構密接につながっているような気がしますね。

山本貴代

「生きやすく」なっていく。

濱口真彩子

それが最終的に「自分の働き方」にもつながるとか、シフトにつながるとか。

ニューノーマルな女性のあり方・ライフスタイル

阪本節郎

だからやっぱりニューノーマルっていうのもコロナで随分言われていたけれども、やはり国の偉い人とかが言ってもなかなかちょっと、はあそうですかっていう感じで、いまいちリアリティーがないんだけど、やっぱりそれも女性がやることによって初めてリアリティーが出てくるっていうか。

濱口真彩子

そうですね、絶対加速する気がしますね。やはりコロナで言われていた「ニューノーマル」って、価値観の大逆転みたいな話だったじゃないですか。さき程もちょっと言いましたけど、これまでは、家の中と外とか、仕事のONとOFFとかそういうものが全部分かれていたと思います。それがコロナで全部シームレスになって一緒くたになって、それによって女性が今まで分かれていた社会的な役割、女性、母、妻とか、あと社会人としての役割もね、いろんな役割が全部一緒になって行く。一つの自分、私としていろんな物事に対処していくっていうことですね。今までは丸がいっぱい分かれていたと思うんです。それが一個になってその周りに矢印が付いているようになる気がします。それはもう、一度味わってしまったら、女性は元へ戻れない。コロナが落ち着いた時に、またふたたび社会的役割分けをして、しっかりそれぞれの部分最適でやっていく、というのは、もう無理だと思います。なんか「ニューノーマル」というか、この流れは、絶対コロナに関わらず加速してくんだろうなという感じがします。

阪本節郎

コロナの最中でしたけど、まさに若手の子育て中の女性社員とちょっとリモートでいろいろと話をする機会があって、その時に面白いこと言っていました。仕事でリモートするわけじゃないですか。そうすると当然上司と話をするわけです。夕方になって、じゃ、何々さんもこれで今日は終わりかなって聞かれたそうで、その時、はい、あとご飯の支度だけですって言ったんだって(笑)ご飯の支度は会社の仕事じゃないんだけど、あとそれだけ残ってますってつい言ってしまったということです。

山本貴代

うちね、変わったんですよ。コロナで大きく変わったのかな。元々うちの夫はご飯作る人ではあったんだけど、さらにコロナでもう役割が変わったっていうか、お昼なんですが、夫は仕事で海外とかにも行けなくなって、少し家で落ち着いているんです。私のほうがちょこちょこ事務所もあるし出て行って、お昼に帰る。大体12時15分になると夫がご飯ができましたって。

阪本節郎

ほんとに?

濱口真彩子

すてき!

山本貴代

そろそろパスタが茹で上がる頃ですとか。早く食べないと麺が伸びるよみたいなこと言って。大体やっているとうまくなるんですよ。ずっとやっていますから。

阪本節郎

そう、やっているとうまくなるの?

山本貴代

私はやらなくなったから、夫のほうがうまくなってきちゃったかな。これはやらないと腕が劣るな、と思って。そうなんです、夜もおだてるわけじゃないけど、男の人って凝るの好きじゃないですか。包丁研ぐとかね、バーミキュラ買うとかね。どうぞお好きな物買ってくださいって。私一切問わないんですよ。冷蔵庫のなかも彼のもので。そうすると自分が買った自分の道具だっていうことになって、その道具を手にした人はすごく頑張るんですよ。だから今結構逆転しているんです。

濱口真彩子

あ~素敵!

山本貴代

私はできる人がやればいいなってずっと前から思ってるから(笑)。男だから女だからじゃなくて、得意ならね。私もそういう教育を母から受けて育ってきたので、できることをできる人がやればいいんだ、それがあなたに向いてるものだったらあなたがやればいいしっていうふうな。そのまま、今日の夜ご飯何とかって言って調子に乗ると、今日は作ってとか言われたりすることもあります。(笑) 今は、ちょっと夫が忙しくなってきたので、「毎日は無理、一日交代にして」と言われて、結構すぐにお料理当番が回ってきちゃう。

濱口真彩子

そう思うとやっぱり男性も変わりましたよね。男性も女性も。

阪本節郎

そうね。

濱口真彩子

コロナ下の「ニューノーマル」でほんとに。一気に変わったというか。でも本来そうだろうなって思って。いままでは出社している間はそのまんまにして、夜洗濯物とかしてたのが、それがないじゃないですか。ミーティングの合間に洗濯も回して乾燥させてとか、なんかそういうのって健全ですよね。お腹がすいたらちょっと作って食べてまた仕事してって。人間本来そうだよねってなると思います。

阪本節郎

確かにね。

山本貴代

それがすごくうまくいっている人と、みんな家にいてお昼ご飯まだみたいなこと言う人と、分かれてますよね。

濱口真彩子

それぞれがそれぞれのことやる、というようになっているとすごく健全なんですけど、それが1人が引き受けるようになっちゃっているとすると—。

阪本節郎

もう辛くなる。

山本貴代

そうなっちゃうと、シェー!みたいなことになる。会社に行きたい!ってなっちゃう。

濱口真彩子

逃げなきゃって、なりますよね。

山本貴代

逃げ場がなくなっている人と、ちゃんとうまくいっている人と。

阪本節郎

そう、だからやっぱりそういうふうに生活自体がこれから変わっていくんでしょうね。

濱口真彩子

生活変わって価値観変わるとホントにビジネスチャンスめちゃめちゃありそうですよね。

阪本節郎

そうだね、そこにね。

濱口真彩子

新しいブランドサービスとかっていう、絶対必要になってくる気がする。

山本貴代

それだけ見ていると、ホントにいろいろな物が生まれて来てるなっていうふうに。

濱口真彩子

私もだって今までさんざんプレゼンとかで女性の社会的役割がこうで、それに合わせてこんな物を作りましょうとか言っていましたけど、それが一緒になったら絶対変わるし、作り直さなきゃみたいな。

阪本節郎

でも基本的には、だからそれに従って男性も変わらなきゃいけないっていうところだよね。

濱口真彩子

人としてちゃんとね。

―――――男がやると改革断行となって、すべきか否か、ゼロか100かとなりがちです。しかしながら、山本貴代さんと濱口真彩子さんのお話は、それぞれ、違うことでありながら、いずれも男にはない発想で語っています。つまり、社会改革ではなく、「社会改善」という、ゼロか100ではなく、できるところで日々の改善をして行くというアプローチです。女性による世直しはそうした日々の社会改善であって、これからは、この女性発想の「世直し」すなわち「社会改善」がより大きな力を持ちそうです。(所長談)
(次回は旅行/旅欲です。お楽しみに)